きゃまきのブログ

アウトドア好き陰キャがライフログ残すだけ

アイカツ10thSTORY未来へのSTARWAY に刺されました

 

 私は好きなアニメを四つ選べと聞かれるとこう答える。
攻殻機動隊」(GiSもSACも好き)
アイカツ!
「劇場版レヴュースタァライト
「人造昆虫カブトボーグVxV」

 徹底的に考え抜き、我ながら完璧なラインナップと思っており、特にリアタイで追っていたアイカツ!には格別ならぬ思いがある。そんな人間が「アイカツ!の新作EPが出た」と聞けばいかないわけにはいかない。

 基本自分は創作物を見るということは魂の奪い合いであると考えており、”勝つ”つもりで視聴する。きれいにまとまって大団円を迎えた本作の性質もあり、逆に評価を下げるのではと恐れつつも戦場へ向かった。


 結論から言うとぼこぼこにされた。反則技のオンパレードだろこんなん。刺されて数日行動不能となった。劇ス以来一年半ぶりn度目。結構感情の整理に時間がかかったのでメモ書きしとこうと思う。ここでのアイカツは単にアイドル活動のことだけを指すのではなく前に向かう意思全てを指す場合もあるので注意。

 

------(ネタバレ有)------


 本作のメインテーマは何か。オタクの妄想する二次創作を疑うような光景であった卒業後のシーンが目立つが、あくまでメインテーマは卒業である。もっというと卒業を迎えた現在での未来に対する向き合い方だ。あくまでアイカツ!自体は178話内で完結しており、ずっと日々のアイカツに全力で向き合うことが重要であるという主張に変わりはない。これは本編の終わり方は勿論、ドラマチックガールの歌詞からも明確に読み取れる。その意味で蛇足と感じた人もいるかもしれない(もし後世一気見する人がいれば特にそう感じるだろう)が、またリアルタイムで作品を追うことやターゲット層、時代背景を加味すると重要な役割を果たす作品だと考えている。


 日々のアイカツへ向き合うことの大切さはずっと変わらない。じゃあ何も変わらない?生活していれば環境や考え方など変わり、アイカツへのアプローチも変わってくる。

 学生時代は気軽に友人と相談しながらできていたようなことも、卒業したりしていくと一人で向き合わなければならない場面が増えてくる。いちごと蘭はシェアハウスはしていてもそれぞれ一人でライブ演出と芝居に向き合っていたし、みんなが鍋パで集まっても仕事の話は滅多にしない。勿論全く相談してないわけではないが、進む道が異なり専門性が高くなれば、たとえ一緒に住んでいようとおのずと一人で向き合わないといけないことが増えてくる。コロナ禍等の昨今の時世まで鑑みるとその傾向は強まっており、歳を重ねるとアイカツ無印で描かれていたような向き合い方はできなくなるのだ。


 じゃあ卒業後の彼女たちはただ孤独に闘っているのか、と言われると決してそうではない。これまで積み重ねてきたアイカツが支えとなっている。それは皆がMY STARWAYを聴きながらそれぞれのアイカツに向き合っている様子からも強く読み取れる。美月のような(≒トップ)アイドルになる残酷な夢を夢にし向き合ってきた強い彼女達にとってはたとえ将来のビジョンが昔とは少し変わってきてもそこに日々立ち向かうことは習慣づいたものだ。

 10周年を迎え、昔視聴していた幼女先輩方は現在高校生~大学生となり未来に不安を覚えているかもしれない。そういった層へ頑張る気持ちを与えられるアイドルとして、そして人生の先達としてアドバイスしているのかなと感じられた。


 そしてパンフに記載されていた残りのおまけのターゲット層である「それより上の方々(要は私みたいな独身異常男性e.t.c)」には「彼女たちはずっと日々のアイカツに向き合った日々を糧に更なる積み上げを重ねてるけどお前らは?」と問いかけているのだ。

 積み上げてきたものがあるか?さらにそれを糧とできているか?いつの間にか初心を忘れて仕事の愚痴ばかりこぼしていないか?自分がこれまで歩んだ道は誇れる道か?自然とそういったことを考えさせられてしまう。

 「ノスタルジーを感じたい」「昔のアイカツの優しい世界を感じたい」といった舐めた姿勢で臨むと現在の自分の現実への向き合い方を問われてしまうのだ。積み上げてきたものがあれば現実にも立ち向かえるしスター宮に「頑張ってきた」といわれたことを素直受け入れられるだろう。逆になければ「違う...そんな褒められる生き方をできていないんだ」と自省の念に駆られるし実際の現実世界も不安定な足場の中で闘わなければならない。本作は自らの人生の写し鏡なのだ。


 目標に対してひたむきに進むことや友人関係等横のライン(空間的なもの)、憧れの継承といった縦のライン(社会の総体として時間的なもの)の話は本編でも強く主張されていたが、目標のそのあとやその次といった縦の時間的なラインについてはあまり触れられていなかった部分であった。いや「思い出は未来の中に」や「未来向きの今」部分で触れられてはいたのだが、まだ学園の中という怖いもの知らずのままで入れる空間の中でがむしゃらに頑張っていた部分があり、今回ほど自己の選択や意思決定に対する責任が増してきた中でも同様の意思決定が保てるかといったリアリティある話はなかったと思う。

 今回その部分に注目しつつ、アイカツシリーズが培ってきた過去十年と未来を扱いながら現在というものを描く構成力に刺されてしまった。アイカツ無印を見て、「きっとみんなも日々のアイカツに向き合って前を向いているんだから終わりを悲しまずに前を向いて進むぞ」と割り切って7年(7年!?)やってきた。そしたら急にこれが出てくるんだから狂わずにいられない。ズルい。というか卑怯。


 ファン映画ということで適当にお茶を濁しながら描いて小銭稼ぎ、みたいなやり方だってできたはずなのに、ここまで攻めた内容にしたのも本作の持つ前に進む力あってこそだと思う。今度こそほんとに最後というよりは、またこういう機会もあるのかもしれないなぐらいの感じで日々を生きていこうと思える傑作だった。

 

 

●余談というか本筋と関係ない感想とか戯言とか
・ルミナスの新曲を若手の瀬尾祥太郎が担当しているのは、MONACA内での継承や変化していっている様子が感じ取れて一方的にエモさを感じていた。(別にMONACAアイカツだけ手掛けているわけじゃないので当然若手や後輩にも仕事の場として出てきた側面がメインなのだろうが。)


・ソレイユをずっと続けたいという話どうなったのかみたいなのもちらついたが、進む道がずっと完全に同じこともないし、矛盾しない程度の話だと好意的に解釈している。


・あかジェネになってからの「天然ドライヤー~」のとこもそうだが、たった数秒~数十秒でソレイユ空間の質感を出せてしまうのis何?鍋パの部分は環境などは我々の生きる現実に近づいたものであった一方会話劇は昔の作品の空気感を保てているのでヤバい。


・蘭の車BMW Z4にしたの、音を現実のものにして臨場感を持たせたかったから加藤陽一脚本の車にしたのかな。それにしてもスポーティな車が似合いすぎる。22歳で買う車じゃなくない?とか思って死んでしまった。前の会話で演劇の話をしてたから一瞬演技の話なのかなとキレイにミスリードさせたよね。


・ライチが身長伸びるのは分かるけどあの身長でC.V.瀬戸麻沙美なの笑いこらえるので必死だった。
・最後のEDほんとはカレンダーガールかドラマチックガールの予定だったんだろうと思ってるけど、無数にいい曲があるせいでまったく違和感感じなかったね。


・ライブの観客として、星宮いちごからの言葉を貰えるというのは非常に大きく、映画での体験という強みも出まくってた。ほんとに隙が無い。最近毎日星宮いちごにあんなこと言われて裏切れねえよと思いながら生活している。


アイカツは優しい世界ではあるが甘い世界ではない。足を引っ張ったり他者の利権が絡んだりといった負の感情はないが、そういった要素がなくともトップアイドルになるために勝ち抜くのは過酷な野生の世界だ。アイカツ!は日常の安寧を得るために逃避するためのものではなく、日常に立ち向かう力をもらうための作品だとお思っている。